■以下の文章は、1999年末に発行した、「『ONE』〜輝く季節へ〜 私的解題読本」【永遠の盟約】というタイトルの本に掲載したテキストの改訂主要全文(前段)になる。『ONE』という作品に相当感銘を受けた直後に書いたもののため、内容が混沌としていて今更一読に値するかどうか微妙なところかと思ったのだが、「続 永遠の盟約」の本稿発表を今後予定しているので、そこへ到達するまでの思考の過程を追う意味で参考のためあえて公開に踏み切ることにした。ただし、気に入らない部分も数多あるので、いずれ全面削除するかもしれない。


 『ONE』〜輝く季節へ〜 私的解題読本

   【 永遠の盟約 】 

 

瀬川あおい

 

【くちづたえのやくそく】

 

 もしも…。もしも、ずっとずっと昔、小さな子供が自分で自分に「魔法」をかけてしまったのだとしたら、たとえそこにいたずらな「魔法使い」がこっそり介在していたとしてもそれはやはり、その子自身の「意思」がもたらした結果であったにちがいない。幼い子供の頃に交わした、ある「魔法使い」との「永遠の盟約」。それは、紛れもない、彼の魂を取り引きとした、本人の望むゆがんだ「幸い」への切実なる願望だった。その時に全ては、何もかも「終わって」いたのだ。たとえ幼い日の戯れの約束であったとしても、交わした口づけの烙印はもう、永遠に消えることはない。それは「盟約」だったから。そして、その世界に一歩足を踏み入れた瞬間、彼の「時」もまた、流れる術を失ったからだ。だからもしも、彼の選んだその変化の無い無時間とも呼ぶべき「えいえん」な世界から解き放たれようというならば、もう一度、「魔法使い」との「盟約」を超える本当の「絆」をねがわなければならない。あの幼かった自分が「永遠」を願った相手よりも、さらに大切な人との「絆」。心からその人の魂を求めようとする心。閉じられた世界へと収縮する気持ちを突き破って。変わりゆくものを受け入れ、その中でお互いを切実に求め合い、けしてその愛だけは忘れない心。…そうして、奪われた魂を取り戻し再生しうるような奇跡の訪れを、人々は「輝く季節」と呼ぶ。そう、輝く季節へ…。巡る季節の訪れへと再生する物語こそが、『ONE』(−たった一つの大切なもの−)にかけられた魔法の本当の願いであるからだ。そいつは、「1998年の奇跡」と呼ぶにふさわしいものだったと、誰かが言っていた。いつだって、奇跡を起こすのは人の心。そうだね、それはきっと、本当の「えいえん」の始まりなのだから・・・・

 

【たったひとつのたいせつなものならば、せめてそのなかからこたえを】

 

 『ONE』は難解なゲームだと多くの人は語っているけれど、本当にそうなのだろうか?

 確かに、世界を明示的に語る術を逸した形態ではあったかもしれない。…というより、本来語れない世界をそのまま表現してしまった、という言い方の方が適切か。けれども、これほどのテキストを費やして語ろうと試みられた世界観なのだから、そこに浮かび上がる不可思議ながら確かな世界全体のイメージを無視することなどできない。漠然と、「消えること」と「戻ること」を了承するだけでは多くのプレイヤーは納得がいかないからこそ、全てのシナリオの分岐の枝葉までできるだけ試してみようという気持ちが起こるのではないかと思う。やはり『ONE』を体験した人は『ONE』をもっと追求し、知るべきだ。最後まで答えを求め続けるべきだ。たとえ『ONE』そのものをこの世に送りだしたディレクターが、「”これが答えだ”というようなものは用意していません」と公式にコメントしていようとも、既に発表されユーザーの手に渡ったパッケージはそれ自体として完結していなければならないというのが、僕自身の信じるところでもある。ならば答えは、ひとえに表現された「作品」の内部を吟味することからのみ、導かれるべきものだと思われる。完全に表現されることなく終わった事柄。その不足したピースを読解する者が補い埋めていけば、それはいずれ必ず完成に到るものであるはず、いや、そうでなくてはもはや「作品」と呼ぶに相応しくない単なる瓦礫の山(ゴミ)だと言えよう。−−そんなものとして『ONE』を終わらせたくない気持ちで、なんとかここではその「解題」に臨みたいのだ。つまり、『ONE』の世界を愛している僕自身の気持ちの決着の付け方として、このテキストをこれから著わしてみたい。すでに発表から一年半を経過していながら、未だに判然としない議論の行方を追いつつ、それらをなんとか一個の額面に束ねることが出来れば、目的は達成されるのだと信じている。

 正直、そんなことが本当に可能かどうかは、実のところわからない。しかしおおむねの目安はつけてある。あとは記述作業の中で再考するのみだ。俗に言われる『ONE』の難解さを本当はなんでもないものにするために、以後しばらく努力してみるつもりなので、興味のある方はしばしどうかこの後についてきて欲しいと思う。

 

【せかいをひょうげんすることば】

 

 結局、ゲームの中のテキスト量95パーセントを占める学園ドラマの部分は、「世界」を正確に記述できていない。あるいは、「世界」の中に思い描かれる主人公の主観内イベントという様相を崩せない。そこでつぶやくささやかな思い出。幼なじみとの認識の食い違い。混乱した記憶のかけら。それらは全て、偽装されたフェイクな条件の下で構成される日常の仮装としてしか信用性を保証できない。というのも、主人公自身が何かによって作られた嘘の「記憶」を信じ込んでいる局面がたくさんあるからだ。彼が今、立っているその世界の軸足は、果たしてどこに存在するのか? おそらくならば、消えてしまう「この世界」よりもむしろ、これから行こうとしている世界の方こそ、本人の依るべき「真実」の目覚めに近いと言えるだろう。そいつがたとえ非日常的な光景に包まれていたとしても、確かに、遠い過去の日、彼はそこへ到る道を望んだのだ。「世界」はそこからはじまって今また、そこへ収束しようとしている。物語のバックグラウンドはまさに、「えいえん」にこそ主体的に包まれているのだ。「現実」と思っていた世界が次第に「えいえん」の浸食を受け、裂け目を露出し、やがて主人公の環境全てがそれへととってかわる構図こそが逃れられない基本的な流れなのだから、この本当の「現実」を無視して成り立つものなど本来何もないだろう。

 事実問題としては多くのプレイヤーが、「えいえん」を拒絶してそこから帰ってくる主人公のドラマのみを受容しているように見えるが、『ONE』がエキセントリックに語りかけようとする人の心の真実とは、紛れもなく「えいえん」の体験である。「えいえん」を知ることによって、あるいはその世界を通過することによってしか対照的に描くことのできない本当の意味での「絆」だからこそ、そこに触れられた物語はかけがえのない価値というものを実感させるのだ。この、きわめて作為的で先鋭的な手法を見逃してしまって、いったい『ONE』のドラマ性の何を理解しえたと言うことが出来るだろうか?

 …だから、主人公の日常世界の中にふとわきあがり次第にその輪郭を明らかにしてゆく、彼の内省的「えいえん」の世界についての記述から、まずはここでひもといてゆきたい。「世界」を表現するに足る最も信頼性のある言葉が、あるいは彼自身の内部に目覚めつつある「もう一つの世界」についての詳細な手がかりが、この中にこそ重点的に表現されていると考えるべきである。まずは第一に考察されるべきものであるはずだ。

 

【えいえん そのいち 『海と暗雲』】

 〜うみにたゆたうぼく〜

 

どこまでもつづく海を見たことがある。

どうしてあれは、あんなにも心に触れてくるのだろう。

そのまっただ中に放り出された自分を想像してみる。

手をのばそうとも掴めるものはない。

あがこうとも、触れるものもない。

四肢をのばしても、何にも届かない。

水平線しかない、世界。

そう、そこは確かにもうひとつの世界だった。

そしてその世界には、向かえる場所もなく、訪れる時間もない。

でもそれは絶望ではなかった。

あれこそが永遠を知った、最初の瞬間だった。

大海原に投げ出されたとき、ぼくは永遠を感じる。

だからぼくは、小さな浜辺から見える、遠く水平線に思いを馳せたものだった。

虚無…。

意志を閉ざして、永遠に大海原に浮かぶぼくは、虚無のそんざいだった。

あって、ない。

でもそこへ、いつしかぼくは旅だっていたのだ。

 

 「えいえん」を語る主人公。その内省的まどろみは、たいへん詩的だ。誰に語りかけるというのでもなく、彼自身が子供のころの体験を子供の言葉でポエムのように表現してみるところに、「えいえん」の始まりがある。この光景の出現は唐突で、しかもまた、現実世界との対比としては圧倒的な「違和感」を伴っている。最初にこのモノローグに出くわした時は、一体「彼」が何をいわんとしているのかてんで想像がつかないだろう。けれどもそうしたただならぬ気配のうちにふと、彼が毎朝目覚めて幼なじみの女の子とかけあいの会話をしながら学校へ通う、それだけの「世界」では物語が完結しえぬ予感をこそ感じることが出来たのならば、それで一通りこの詩文の目的は果たせているに違いない。問題は、主人公の意識が日常に沈殿する澱の中にだけではなく、登下校の途中や自宅のベッドの中でふと湧きあがるもう一つのイメージ世界の中にも、二重に存在することを理解できるかどうかなのだ。そうした「異世界」を了承できるかどうか、なのだ。一見強固そうな日常世界にがんじがらめにとらわれていると、そういった表現部分自体がわずらわしい無為なものに見えてきてしまうかもしれないが、本当はおそらくそこが、主人公自身一番素直に自分の境遇を語っている世界。「もう一つの世界」というよりも、彼の「根源の世界」と呼ぶに相応しい視座だということを、あらかじめ確認しておいたほうが幸せになれるかもしれない。物語の終末にはどのみちそこへ、旅立つことが避けられない運命なのだとしたら…。

 さて、人はここで語られているように素直に「永遠」を感じることが出来るのだろうか? それを体験することは出来るのだろうか?

 実のところが、この世に「永遠」のものなど存在しない。わたしたちが触れうる全てのオブジェクト(物体)は、有限なる限界で切り取られたものであることを経験上、なんとなく成長する過程で学んでいる。何もかもが、大きさや重さを持ち、色や形を持ち、そして例外なく「感覚的な」対象であり続ける。もちろん、自分自身のからだそのものもそういうことになっている。だから、自身の肉体を含めて全ての知覚できるのものの中に「永遠」などというものは存在しない。自分の感覚の全てを満たしてしまうような、完全なる広がりや無限定的なものを体験することなんて本当はできない。ところが、人類はどうしたことかその、えいえんなるものをそう呼び表すことば、すなわち「永遠」という概念を持っている。それはとても不思議なものなのだ。つまり人は、単に自分が体験したものとか、経験できる対象についてのみ言葉を使う生き物ではないということだ。「永遠」という言葉で第三者にまで伝えようとしたもの、それはきっと「想像」され「拡張」されたものなのだ。永遠でないものから永遠へと拡張してゆくイメージの世界。それが、ここでいわんとする主人公の中の「永遠」であることだろう。

 例えば「どこまでもつづく海」というものを見ていると、その水平線がまさしく無限なるものへと触れているようで、魂がそこへ吸い込まれていくような感覚に陥る。そういうことは決して、特別な誰かの気持ちの中にだけ起こりうるものではないはずだ。きっと多くの人が、子供のころに海を見つめていてそういう感覚にとらわれたものなのではないか。それは…なぜかとても、心に触れる光景なのだ。何かを懐かしんでいるのかもしれない。どうして肉体という限られた領域を持ち、そこからしか世界を眺められないなんていう閉塞した存在として、僕はあるのだろうかと問いかけてしまうこと。そういう思いに駆られたことがない人なんて、一体いるだろうか? たとえば広大な海にたゆたうこと。その中で手足を伸ばし、そこになにものも触れず、目を開いても無限なる水平線しか存在せず、音もなく、時間の流れさえも無意味になっていくような感覚。海の一部へと還っていく瞑想。それは、本来人間には許されていない「永遠」の中へと回帰していくようなイメージであることだろう。結局なんてことか、それを希求しているのだ。永遠へのあこがれを、心のどこかに持ち続けてきたのだ。もしも「永遠」から生まれたきたのなら、その懐かしい「永遠」に還ろうとするのは、生きとし生けるものの本能に根ざしたものであると言えるかもしれない。海は、そういう原初的なイメージを喚起する極めて不思議なものだ。そこには人の限界性をのみこむような夢幻的広がりがある。

 小さな浜辺から水平線を見つめながら永遠をイメージしつつある「ぼく」。それから、意思を閉ざして永遠の大海原に浮かぶ「ぼく」。二つの「ぼく」は、つながりあった同一の感覚の中で満たされているのだろう。むろん、浜辺の「ぼく」は、ふとした人の呼び声や鳥の鳴き声で自分の本来の位置に戻ってきてしまう。「永遠」はあくまで彼のイメージする想像世界に充満する別世界であったから。しかし、「今」彼が存在している場所は、彼自身のイメージが自らの身体性をものみこんでしまった、本当の「永遠の海原」だ。肉体性を喪失し、あるいはそれを持つことが無意味となってしまったとき、外界からの個別的な感覚的刺激は全て取り払われる。無限に浸された心は、ただ、そこにたゆたっていることが全ての「体験」であるから。もはや、有限なるものは彼の視野の前にない。従って肉体も、自分という「世界」から切り取られた「世界」を認知するための意識というものも、ない。あるのはただ、魂のみである。永遠なる世界を認知する虚無の魂、それだけの世界。そこへ、いつしか旅立っていたのが、本当の「ぼく」であるのだとしたら、「生きている」という認識すらもう、無意味だろう。

 実際、肉体があるのかどうかということはもはや問題ではなくなっている。たとえば、病院のベッドの上、生命維持装置に囲まれて植物状態で夢遊する魂であったとしても、既に「そこ」へ還る必要性がなければどうあろうが関係ない話だ。あるいは肉体が朽ちて、暗い穴蔵の中に埋められ、重い石を乗せられているのかもしれないとしても、そういうことに構ってみる必要性が果たしてあるのだろうか? 「もうそこへ戻らない」のだとしたら、それは、「存在しない」ことと同義なのだ。もし「夢」が「永遠」ならば、もはやそいつは「夢」ではない。「夢」として識別する必要がない。識別することができない。あるいはこういう風に言うこともできるだろう。かつて肉体を持っていた自分こそがむしろ「夢」だったのではないか? 有限なるものは、必ず時間的な始まりと終わりがある。始まりがあり、終わりがある必然性。それは、まさしく「夢」の特徴ではないのか? いつか覚めることがわかっているからこそ、それは「夢」と呼べるのではないだろうか? そう、人はいつか寿命が来て死んでしまうはかない存在だが、その人生を「夢」と呼ばずして何と呼ぶのだろうか。

 「永遠」は、人の生より遙かに強固で、リアルなものである。そいつはただ、プリミティブな「存在」と呼び変えてもいいくらいだ。【ONE】。哲学的に「全一」とも記述される。論理的記述は不可能にしても、人はそれをそう呼んでいる。「存在」と「永遠」と「ONE」とは、ほとんど同義だとも言える。

 冒頭からそういう自分の意識のおかれた状況が自覚的に語られるということ。パラレルに時間が進んでいるのだと解釈すれば、「えいえん」の中でまどろむ「ぼく」の「夢」の世界として、学園ドラマがあることを物語は示唆している。あるいは少女達とのお話しが「えいえん」の側から回想(リ・イマージュ)する内省的「夢」の世界だとしても、「えいえん」と対置する限りそれはやっぱり「現実」と大して違わないだろう。というより、リアルタイムか回想かという時制そのものがもうそこに成り立ってはいない。「えいえん」の世界とは、文字通り永遠。そこに時間の流れというものはない。ということは後先という関係性もないかもしれない。相対する学園物語の中の主人公の体験がどういう時制をとっていたにせよ、それは時制を取る限り「えいえん」にとってはほんのそれ自体の一部であるということしか意味しえない。「えいえん」は、無時制であるから、「えいえん」なのである。だがなぜかここでは、魂そのものの「境界」は否定していない。「ぼく」は、その「世界」の中ではずっと、「ぼく」なのだ。それが、彼の漂っている不完全な「えいえん」の特殊性でもある。まだ「境界性」を完全に超えていない。それはたぶん振り返ってみれば、あるもの、あるいはある個人的な「ヒト」への執着が、きっとそうさせているのだろう。魔法使いと魔法の国、そして魔法の国の住人。…そして、いつもそばにいてくれる人とは誰なのか? これらのパーツをどこにあてはめるかで、『ONE』の解釈は根本的に人によって異なってしまうが、全てをぴったり枠の中に収める組み合わせがおそらく一つだけある。それを探り出さねばならない。本当の「えいえん」を目指すためには。

 

【えいえん そのに 『遠い街』】

 〜あかいゆうひのむこうのせかい〜

 

夕日に赤く染まる世界。 静止した世界。

べつに光景が止まっているわけじゃない。

光は動いているし、バイクの加速してゆくエンジン音だって聞こえる。

静止していたのは、それを見ている自分の世界だった。

真夜中、誰もが寝静まった中、遠くに犬の遠吠えや、バイクのエンジン音を聴くのに似ている。

そういうとき、ぼくは属する世界が違うという違和感を覚えるものだった。

聞こえるのだけど、そこにはたどり着けない。

永遠、たどり着けない。

どれだけ歩いていっても、あの赤く染まった世界にはたどり着けないのだ。それがわかっていた。

そこには暖かな人々の生活がある。

でもそこにはたどり着けないのだ。ぼくは。

 

 夕日というと学校の屋上、屋上というとみさき先輩。…そういう連想的な流れの中で、このシーンは実際、タイミング的にはみさき先輩との邂逅の後に現れる。主人公は眠っている。それなのに、その動いている「夕日に赤く染まる世界」の「光景」が見えているのだ。この感覚を、例えば誰もが寝静まった真夜中に、犬の遠吠えやバイクの音を聞くようなものだと表現している。眠っているとき、人は自分の内意識の中に所属し、そこに沈殿しているが、ふとそういう状態の中で聞く外乱的な音は、どこか遠いものだ。眠りが深ければ深いほど、外の世界から伝わる音は自分の内部世界から切り離されたもののように感じられるし、あるいは自分の一部でもあるような錯覚を起こす。主観内に転用されたざわめきは、まるで非現実的なもののようにそこに繰り返す。しかし、自身がどう望んだにせよ関係なくそれらは本来存在し、見えているのに触れられない静止した景色として現前してしまう。たとえそれらが音だけの世界であっても。止まっているのは彼らではなく自分であるからだ。

 都市をある一点で見据える。すると、その光景は静止してしまう。そこからは当然、都会特有のざわめき、車や単車のエンジン音が静かに届き、明滅する光の点が視界を装飾している。しかし、都市との距離が離れていればいるほど、自分が対照的に止まってしまう。と、そういった景色もある種の帯域的なフィルターがかかったように、ダイナミックレンジを下げてしまう。あるいは光のコントラスト感も。静止した箱庭の中で、遠く遠く、その光景は存在し続ける。…こうした感覚的たとえを、一枚の遠景写真でもって表現している場面である。景色は、細微な部分で確かに動いてはいるのだが、「こちら側」には決してかかわってこない。なぜなら自分は景色の「外部」にいるから。多くの人が豆粒のように存在するが、誰も自分に話しかけてきたりはしない。なぜなら個々の声は届かない距離に自分がいるから。「世界」とのそうした絶対的な距離感を、ここでは「えいえん」から眺める主人公の視点で表現しているのだ。そもそも「それ」が見えているということが絶対的に不思議なのかもしれないが、ところが「えいえん」とは、どこだって見えるけど、どこともつながっていない「属するところの違う世界」ということらしい。「ぼく」は、こちらがわに来てしまったので、もう二度と、どんなに願ってもあちらの世界には「たどり着けない」。あちらがわとは、人々の生活のある世界だ。たくさんの人が生きていて、お互いの人生を歩んでいる、関わっている、人間どうしが互いの意思でもって複雑に絡み合う現実の世界。それが、今の「ぼく」にはもはや手の届かない「赤い夕日の世界」として認識されている。

 たぶんつまり、こちらがわからはあちらが見えるけれど、あちらがわからはこちらが見えないのだ。存在しないのだ。ないことになってしまっているのだ。主人公の存在も、今や、無い。無。虚無。そういう絶対的な敷居・境界を超えて、僕は「「えいえん」の世界に佇んでいる。見えているのは、「過去」に体験した筈の世界なのかもしれない。しかしながらいつか、こちらがわに来ることを選んでしまったのだ。なぜ、暖かな人々の生活のある空間を、そうとわかっていて離れてしまったのか? 彼は後悔しているのだろうか? その心境はどういったものなのだろうか?

 

ころころ…。

微かな音がした。

それは確かにこちら側の音だ。

<あそこには帰れないんだろうか>ぼくは、訊いてみた。

<わかってるんだね、あそこから来たってことが>

<ああ、わかる。でも、ほんとうにあの街のどこかに住んでいたわけじゃない>

<そう。すごいね>

<つまり、あっち側の一部だったってことがわかるんだ>

<でもね、旅立ったんだよ、遠い昔に>

<そうだね。そんな気がするよ>

<でも遠い昔はさっきなんだよ>

<それも、そんな気がしてた>

<つまり、言いたいこと…わかる?>

<わかるよ。よくわかる>

 

 この時、主人公の魂が聞き分けた「ころころ」という音。むこうがわの世界の音に紛れてしまうことのない、わずかではあるが確かな、こちら側の音。それは、後述する「カメレオンのおもちゃ」の車輪が、回転する時に軸上につながれたクランクより発するささやかな音ということでまちがいないだろう。確かに、彼はこの世界でその音を聞いている。本当はもう聞こえる筈のない「その音」を聞いている。車輪を転がす「主」はもういないのに、おもちゃの音だけが彼の耳に伝わってくる。なぜか? それは彼自身の心が作り出した音なのか? 

 ……みさおがおもちゃを手のひらの上で転がす音。その音をいつまでも聞いていたいという切実なる気持ちが彼の幼い魂をここへいざなったのだとしたら、カメレオンのおもちゃの車輪の音はいつまでもいつまでもここに響いていても仕方がないものだ。しかしながら今、彼が立っている視界の中には、肝心なみさおの姿もカメレオンの姿もない。あるべきものの姿が実は存在しない。そこにいるのは誰かといえば、彼自身にもなにものかわからぬ少女のみなのだ。そこのところが、決定的に不自然な状態ということになる。当然、このシチュエーションはなにものかによる意図的な、仕組まれた不自然さだ。そして「カメレオン」が発するはずの「ころころ」という音はいったい、どこから聞こえてきているのだろうか? 彼自身の空耳でないとしたら、その物体はどこにあるのか? 心が勝手に奏でる逃れられない心音なのか?

 答えは、かなり近接したところにある。  「あそこには帰れないんだろうか、ぼくは」と聞いてみる。すると返事が返ってくる。傍らにいる「少女」の声だ。えいえんの中で、「ぼく」はこの「少女」とともに存在している。「えいえん」が彼自身の作り出した彼だけの世界だというのに、どうしてその中に彼女が存在しえるのか? という疑問。回答はおそらく容易だろう。想像に難くないのは、彼女が彼に「えいえん」の世界を与えてくれているということだ。彼女が、「魔法使い」の「魔法」そのものの「姿」だからだ。願ったのは少年。与えたのは少女。「魔法」をかけたのは少年。その結果、一緒にいてくれるのは少女。えいえんに、えいえんに、幼い二人の「盟約」の「世界」がつむがれる。カメレオンのおもちゃの車輪の音とともに…それが、「えいえん」の二人の「盟約」であり、秘密なのである。ずっと二人きりでいることをあの日、約束してしまったからこそ、今ここにこの世界がある。

 静止した世界。虚無。しかしながら絶望ではない。絶望から逃げてきたからこそ、ここに入り込んでいるのだ。 見えている街の中へ、そのぬくもりの中へ彼は、ふと戻れないのだろうかと思案する。むろん、彼が今見ている光景というものも彼自身の意識が作り出した幻(あるいは魔法の街)にすぎないのだから、その街の中にかつて住んでいたと考えるのは正しくない。意識の底部にイメージされる「街」が本来所属する「世界」、そこに、自分もかつては属していた。そういう言い方が正しいのだと思う。それは、「この世界」とは異なる「世界」である。人が生きている本当の「世界」である。この、「えいえん」からそこへ向かう通路…そういうものがないのだろうかと彼は、ふとたずねている。

 <あそこには帰れないんだろうか>

 本当は帰りたいのだろう。…答えのないことを知りながら、それでもつぶやいてみるのだ。無為と知りつつ、そんな話をしてみたくなったのだ。ふとした感傷的気持ちを湧きたたせるには、あまりにもその夕焼けのイメージはよくできていた。いつの日か、校舎の屋上で眺めた、「あの夕日の世界」のように、ただ遠く感傷の色に染まっていた。旅立ったのはずいぶん昔のことだ。きっとそうだ。彼の主観内部に流れる時間にあっては、ずいぶん過去のこととして思い出される。リアルに考慮すれば、それからおおよそ10年もの月日がたっていることだろう。ただし、主観内時間というフローについて考えることが「この世界」で意味があるのだと仮定すれば、ということ。彼は体感上、自分がもう、「あの日」から数えてものすごく長い日数を経過しているものの、結局この「えいえん」の世界にあっては全く歳をとってはいないことを知っている。遠い昔もさっきも、ここでは同じ意味になってしまう。なぜなら「えいえん」の世界の「時間」は直線ではなく、点にすぎないからだ。点というものは、いくら積み重ね続けても結局点にすぎない。線にならない。「連続」しなければ「時間」は流れない。ところがこの「世界」は「連続」しない。過去も未来も現在も、全て同じところをぐるぐるとめぐっているだけ。流転しつつとどまる。…それがこの世界なのだ。

 点といっても、主人公が完全なる点に帰一せずに「自我」を保って「運動」している限りはそれ自身、ある種の限定的「広がり」を持っているのかもしれないが、結果的にそこにとどまることによって結局は元の所に還ってくる円還運動をしているのにすぎないのだろう。遠い昔も、今も、そして到来する未来も、カメレオンのおもちゃの車輪にとっては繰り返し循環して訪れる一点にすぎないのだから、ね。それはただ、ずっとずっとえいえんに回り続けているのだ。「ころころ」と微かな音を立てて、彼の傍らで車輪が回り続けている。いつまでも終わりのない循環が、結果「えいえん」の中に魂を封じ込めている。

 そこにあるのは、いつかあの娘の手のひらの上で回っていたのと同じ音だ。そしてそれをやはり「ぼく」は、望んだのだ。ここにある「えいえん」を。ここだけの「えいえん」を。彼女とだけの「えいえん」を。

 <つまり、言いたいこと…わかる?>

 <わかるよ。よくわかる>

 わかってくれるね。だから、10年たっても変わらず「ぼく」と呼称し続けるのだ。彼女の前で、「ぼく」はずっと「ぼく」だった。そうして彼女もおそらく、いや、確実に歳を取っていない。歳を取らない存在。魔法使い。円還。えいえん。…そうだね。もう気づいていると思うけど、彼女は人ではない。「人間」ということはありえない。「魔法使」いによって「魔法」がかけられた「なにものか」、なのだ。そしてそれ故に「全て」を見通している。この「えいえん」の世界を含めて、主人公の苦悩も喜びも叫びも涙も、「全て」を知っている。彼とともに存在しながら、ずっと一緒に遊んでいる。

 遊んでいる? それは、「ぼく」の方ではなかったか? 「えいえん」の禁じられたこの遊びを本当に願ったのは、彼自身ではなかったか? 彼女の誘いを受諾し、あの日の口づけとともに円還的車輪世界の中に、彼は自分の魂を自ら閉じこめてしまったのではなかったか? 「遠い昔」という「今」に。だから、「魔法」をかけたのは、「魔法使い」は、自分のはずだった。ゆえに「ぼく」はそれをとてもよくしっていた。とてもよくわかっていた。 ずっと、動いている世界を止まっている世界から見ていた。 一分一秒がこれほど長く感じられることなんてなかった。 もどかしいくらいに、空は赤いままだったし、耳から入ってくる音は、変わり映えしなかった。…変わるはずがないんだ。 進んでいるようで、進んでいない。メビウスの輪だ。 あるいは回転木馬。そこでリフレインを続ける「世界」。それを「ぼく」はあの日、確かに望んだ。

 

<世界はここまでなんだね…>

ぼくは彼女に言った。

<飽きたら、次の場所へ旅立てばいいんだよ>

<……そうだね>

ヘッドライトがヘッドライトを追ってゆく。

何度も見ている一定の距離感を置いて。

<いや…もう少しここにいるよ>

<そう? そうだね…>

ぼくは体を慣らすように、その光景に身を浸していた。

急ぐ旅でもない。ずっと、眺めていた。

 

 夕日の世界がいたく気に入ったらしく、長時間見つめていた。空はどこまでも赤く、夜の訪れの気配を全く感じさせない。本当の夕日は、太陽が地平線に沈むまでのほんの僅かな数刻の中にのみ見られるものなのに、今目の前にしている光景は、いつまでも日の沈まない夕焼けのひとときを「えいえん」に演出し続ける。その世界は動いているはずだけれど、見ている僕の世界では時がなく、日が沈まないし夜も訪れない。結局、赤い空と遠いエンジン音と行き交うライトの動きとが、おもちゃのように同じ動きを繰り返し、運命をリフレインし続けている。「おもちゃの都市」だ。「ぼく」はおもちゃでずっと遊んでいるのだ。おもちゃのむこうの世界を懐かしみながら、しかしそこへ帰ることのない身の上を思いながら、寂しくずっと見つめている。「世界」はそこまでなんだ。「世界」は自分に関わらなければ、結局、箱庭的なおもちゃにすぎないということだ。その「世界」に住むことなどもう、叶わない。変わっていくことを拒絶し、「えいえん」のすみかに慣れてしまった「ぼく」には、ただ見つめるだけの生き方がとてもよく似合っていると、自嘲的につぶやいているのが聞こえる。メビウスの輪、回転木馬、あるいはカメレオンのおもちゃの車輪は、ころころとどこを転がっているのだろう。行くところなんてあるのだろうか。どこかに到達することなんてあるのだろうか。それともずっと同じ、「ある人」の手のひらの上をいつまでも転がされている存在なのだろうか。

 「えいえん」の中では、いつまでその光景を見ていてもいい。誰もとがめるひとはいない。そうしてこの世界が飽きたら、次の「世界」へと旅立てばいい。それこそ「世界」の数なんて無限にあるのだ。この「えいえん」に比べたら、それらはどれも矮小で「限りある」ものだったりするのである。

 

【えいえん そのさん 『海と一筋の光』】

 〜かなしいきもちがそれをうみだす、こころのたびじ〜

 

また…悲しい風景だ。

<どうしてぼくは、こんなにも、もの悲しい風景を旅してゆくのだろう>

<あたしにはキレイに見えるだけだけど…でも、それが悲しく見えるのなら、やっぱり悲しい風景なんだろうね>

<ひとが存在しない場所だ>

<そうだね>

<ひとが存在しない場所にどうしてぼくは存在しようとするのだろう。もっと、ひとの賑わう町中や、暖かい家の中に存在すればいいのに>

<さあ…よくわかんないけど。でも、あなたの中の風景ってことは確かなんだよ>

<つまりそれは…ぼくの心を風景に置きかえてみたときの姿なんだろうか>

<だったら、少し悲しすぎる…。><わからない><でも、こんな世界だからこそ、ぼくは求めたんだろうけどね>

 

 また悲しい風景の場所に来ている。夜の海? ちょうど日が沈んで、太陽の姿が全く見えなくなって、あたりが漆黒の闇に包まれだして、かすかに水平線方向に、沈み込んだ太陽が放った明かりが空に反射して水面を照らす。そういう、刻々と変動する光の風景の僅かな一瞬だけを切り取ったような、特別にものがなしい風景がここに見える。それも、やはり「えいえん」の風景なのだろうか。

 「ぼく」はそれをやはり悲しいと感じていた。つまりそれは、自身がとてつもない感傷に浸りたがっていることを意味していた。悲しい風景に見えるのは、悲しさを求めているから。悲しい自分でいたいから。結局、そこにあらわれるのは徹頭徹尾、主人公である「ぼく」の「心象風景」に相違ないのだ。心の状態を、気持ちのあり方を、今視覚的に投影するならばそこには、「えいえん」というスクリーンにずっとわびしい風景が広がってしまう。そしてそれを見ることによってぼくは、悲しさを悲しさとして実感する。我が心のありようをずっと、確認し続けている風景なのだ。いったい彼は、何がそんなに悲しかったのだろうか。どうしてそういう悲しい状態へと身を置きたがるのか。傷ついてしまった心はもう癒せないのだろうか。

 「えいえん」とは、彼自身の「願い」の世界であったはずで、そこに広がっている光景はどこまでも内心の反映であり続ける。しかも変化の無い、静止してしまったものである悲しさ。つまりはこの茫洋たる悲しみも、そこが「えいえん」である限り癒されることなんてないのだ。だって、時間は停止したままだから。「ぼく」は、もう、人の存在する世界にいられなくなっていた。人と接触することを完全に拒絶してしまっていた。自身の心の深みの中に沈み込んで、戻れなくなっていた。あまりにも美しすぎる幼い心であっただけに、世界への窓を開く前に致命的な傷を負ったことが精神に防衛規制をかけ、外の世界に開かなくなってしまっているのだろう。無理に開けようとすれば、また、なにものかに浸食されて悲しみの底に叩き込まれるかもしれない。そんな現実の世界に触れることなんて、もう耐えきれない。…だから、封鎖した。記憶も、閉じこめた。自分が何者であるかということも忘れた。どこに居るかということも消した。全ての生きて変わりゆくものの痕跡を消去してしまった。だから「えいえん」の中で彼はもう、本当の自分の名前すら知らずにいるだろう。それはそれで構わない、許された世界だからこそ、この寂しい風景だけを求めたのだ。一人で居る限り傷つくことはないし、もう誰も悲しいことなど外部から持ちこんだりしない。ただずっと傍らの少女と共にすごす自分だけの閉じた世界が、彼の望みだった。

 確かに…確かにそうだったはずなのに、そこに言いしれぬ悲しい感傷がつきまとうのはなぜなのか? それはどこかに、悲しい風景に包まれた自分というものを意識する端緒が芽生えて始めているということなのか? だが、それはなぜ? 「ぼく」は、ぼく自身の心の世界がどうしてそうなっているのかということをも理解できないでいるが、過去の「悲しみの記憶」を封印してしまった以上、もう、本当の理由を得ることなど出来ない。ただ漠然とした悲しみの風景の前で、どうしてそういうものが自分の内にあるのか少しく疑問を抱きつつ、結局はそれを自らの意識の産物として受け入れ、ゆっくり体を浸しているより他ないのだ。

 「ひと」の姿が存在しない、「えいえん」の風景の旅路。もとより「えいえん」の世界に、目に見える風景など実在としてあるわけではないのだから、そこに何かが見えているのだとしたらば、「ぼく」の心がそれを産出して仮想的に視界の元へ「見せて」いるだけのものだ。従ってそれらは総じて「ぼく」の心象そのものの反映だ。そういう唯心的な「世界」の中を、「ぼく」は彼女とともに旅している。その「世界」を分かち合い、心を共有することで「ひと」ならざる彼女とだけは一緒にいられるのだ。それが「魔法」というわけだ。ならば、彼の意識の内奥を満たしているものとは、過去に、現実の風景の中で見かけた「えいえん」を想起させる特殊な風景の連想体であることだろう。それは、すぎた時間の反芻の時である。心の中に残っているイメージの破片をつなぎ合わせ、再生してそれを現前化する。そういう仕方でしか、視界は開かないのである。つまり、彼が旅をしているのは意識の内部に残っているメモリーの断片、憔悴した残像ばかりである。そこに人がいる風景を想像できないのは、そういうものに関する記憶領域を丸ごと封鎖してしまっているからで、代替的に幼い日の心に刻んだ印象的な「風景」ばかりがそこに入れ替わり立ち替わり現れることになる。

 それにしてもこの風景の寂しさはどうだろう? 元々、幸せであった時からネイティブに「えいえん」の風景に触れるような素養を持ち合わせていたとは言えないだろうか? 並はずれてセンシティブであることが、極度に少年の心に負担を強いることになり、あまつさえ運命の非情が不意に彼を襲ったとき、そういう「世界」に逃げ込まざるを得なかったのだとしたら…それは…とても悲しい話だ。だから「えいえん」はある意味、彼が生まれた時から彼の内部で始まっていたとも言える。本性的に「えいえん」を指向しながら生まれてきたのだとしたら、現実に生きている時間の中で本当は誰かがそれをくい止めてあげる必要があった。けれども運悪くそういう人にめぐまれなかったのだ。父を失い、母の関心も喪失し、妹を失い、誰からも手をさしのべられることが無くそのままひとりぼっちでいるうちに、精神の基盤を「えいえん」という内側から浸食されていってしまった。とすれば、この結果について「ぼく」は何を恨み得るのだろうか? 「えいえん」に触れうる心そのものをか? 彼の魂そのものをか?  いや、むしろまだ、彼が「えいえん」という逃げ場を持てたことだけでも、幸福だったのだと考えるしかないだろう。

 それは不幸ながらもまだ、幸福な結論だった。破壊されてしまう前にここへとどまれたことが、少なくとも彼の母親よりはまだ、救いであったとは思えないか? 結局、原因が親譲りの心の弱さであったのだとしたら、つまるところはじめから決まっていた運命に流されてきたのだとも言えるのだ。彼のもって生まれた人生なのだ。「えいえん」という防衛規制。それが「魔法」によって拡張化され現実化したとき、「悲劇」はここに目に見える形で現れた。それだけのことだ。 帰れない場所。 もう、そこからはどこにもいけない場所。 すべてを断ち切った、孤立した場所に「ぼく」は、ずっと居続けていたいんだ。 そして、そんななにもない、どこにも繋がらない場所で、「ぼく」は「ぼく」を好きでいてくれるひとだけのことを、もっと切実に大切に「想う」のだ。「 きみ」と一緒にいられること。 それはこの「世界」との引き替えの試練のようであり、また、それこそがこの世界が存在する理由なのだと思う。

 

<次はどこにいこうか>

<大丈夫。あたしはどこだってついていくよ。ずっとね>

<そうだね>

<このままずっと、いけばいいんだね>

<そう。ずっと> どこまでもいけばいい。ぼくの心の中の深みに。

 

 「えいえん」のことを話そう。それはどういう場所であるかということを話そう。

 「えいえん」=それは希望だ。彼にとってのたった一つの希望の場所だ。そこに居ればもう傷つかなくてすむ、完全な世界。そして本当に自由な世界。それを望んだときから、彼の心の中にはお菓子の国が生まれた。そしてその中に移り住むことを願った。やがて、想像の世界は本当のものとなり、彼自身は「えいえん」の中に移り住み暮らすようになっていたが、どうやらそこには「条件」が存在したらしい。「条件」…といっても、とても簡単なことだ。お菓子の国のお姫様と、ずっと一緒に暮らすこと。とても簡単なことだ。いつだって彼女は彼のすぐそばにいて、ともに旅をしてくれる。特に何もしなくても、「条件」は満たされている。彼のすることなんてなにもない。ただ彼女がいつだってどこでだって一緒にいてくれることを了承していれば、「えいえん」は文字通り永遠であるはずだったのだ。それを拒絶しなければ、ずっとずっと小さいころに願ったお菓子の国は永遠であるはずだったのだ。

 この世界にはおそらくもう、帰るべき世界等というものはない。ここへ来てしまったら、もう、その先へと向かえる世界もない。「「えいえん」は、生きていくことの終点ということを同時に意味するらしい。そういう取り返しのつかない地点に既に到達しているということを嫌でも了承しておかなければ先へ進めない。「えいえん」の魔性と魅力は、本来いったんそこへ踏み込んだものが決して帰ることが出来ない領分である点に存在する。そこに到る道とは、魂を「えいえん」という取り返しのつかない閉ざされた領域の中に投げ込むということを意味していたのだ。神話の中で悪魔との契約が魂を引き替えとするように、主人公の魂もまた、「永遠の盟約」とともに自ら此の地に投げ込まれてしまった。もはや決して後戻りは出来ない、というのがここでの掟である。すなわち、「えいえん」とはそういう場所だ。

 どこにも通路が無く、完全なる円還の中に閉じてしまった世界。結局、人の心が萎縮して外部との接触を拒否し、完全なる孤立をしてしまうということは、それでその人は他者にとっての「おしまい」ということに他ならない。主人公の魂は実際外側から見れば既に終わってしまっているのだろう。だけれども、彼はここへ逃げ込まなくてはいられなかったという切実な過去が、今更ながら重くのしかかってくる。あの日、あのおもちゃの前で「ぼく」は、襲いかかる悲しみを拒絶するあまり、それまでの幸せだった日々だけをかみしめて生きることを永遠に願った。全てを断ち切り、自分の心の中だけで孤立し、完結することで、最愛の者との思い出の循環の中で生きていこうと願った。本当に、壊れる寸前の心の状態で、切実に願った。何も要らないから、妹を帰して欲しい。せめて、その思い出だけを蘇らせて、その記憶世界の中だけでずっと生きていられたら……きっと「ぼく」はそれだけで幸せをいつまでもかみしめていられるのだろうと。そういう「えいえん」の形を願った。彼に退路が無いというのはそういうことだ。もう、現実へと帰る術はない。現実世界そのものを拒絶することでしかもう生きられなかったからだ。正常な自我それ自体を保っていられなかった。精神の迷宮の中で次第に「ぼく」はおかしくなっていく。意識が混沌としてゆく。「ころころ」と車輪の音が聞こえ始める。おもちゃの音。カメレオンのおもちゃ! −それを見たとき、ぼくの両目から涙はあふれ、止めどもない感情が堰を切ったように流れ落ちたものだ。その怒濤の涙も、やがては深い悲しみとともに車輪の中へと吸い込まれて消えてゆく。悲しい記憶とともに。本当の記憶とともに…。

 「ぼく」の願いは、「みさお」と一緒に居られることだった。それを願った。「ぼく」を好きでいてくれる人だけの存在を最も切実に大切に思う日々の「えいえん」をこそ、確かにあの日願ったはずだった。だが、重大なすり替えがそこで起きる。なにものかによるとても重大な意識のすり替え。矛盾するようだが、「みさお」の面影は封鎖された。みさおの記憶は「ぼく」にとってあまりにも悲しすぎる出来事だったからだ。ぼくを壊してしまう出来事だったからだ。いや、「みさお」が現実に「ぼく」をこわしてしまったからこそ、記憶の中から彼女に関する痕跡がごっそり削り取られた。そしてそれを埋める代替が、「えいえん」の「彼女」の存在だったとも言えるのだ。「彼女」との「永遠の盟約」とはそういう意味でもあった。

 だから、「みさお」のかわりに「彼女」と一緒にいられることこそが、「ぼく」にとってのこの閉じられた世界での「えいえん」の試練でもあり、かつこの「世界」の存在する意味にもなってくる。「ぼく」はだまされているのだろうか? それとも、「みさお」を忘れて「彼女」とすごすことこそが「ぼく」にとっての本当のさいわいであり、また、えいえんのもたらす慈悲なのだろうか? わからない。しかし、「ぼく」がこの盟約を「彼女」と結んだのは紛れもない事実であり、確かに「ぼく」の、「ぼく」自身の意思でもあった。結果的にあのとき、「みさお」よりも「えいえん」をこそ選んだのかもしれない。妹との「絆」よりも、「ぼく」が「ぼく」として心を閉ざしてまどろむえいえん・・・。だって妹はもう死んでしまったのだから。そして「ぼく」もきっと、死んでしまうのだから。

 「ころころ」と、彼女が笑う。車輪の音が聞こえる。そうして、車輪の軸はプラスチックのクランクになっていて、そこにはめ込まれたピストン状の棒がちろちろとカメレオンのおもちゃの口から出たり入ったりするのが見える。永遠に、それを繰り返し、やがて季節は流れ、「ぼく」はそのカメレオンの舌の上で永遠の夢を見る。繰り返して飽きない、「えいえん」の「ぼく」の理想の夢。巡る季節の夢。出会いと別れの夢……。カメレオンの舌は、永遠に回り続ける車輪の動きにシンクロして、出たり入ったり出たり入ったり、無限ともいうべき動作を繰り返し続ける。

 「次はどこに行こうか?」「大丈夫、あたしはどこだってついていくから。」

 それが「永遠の盟約」。「ぼく」がこの世界でどこまで「ぼく」自身の心の深みへと降りていっても、彼女は必ずついてくるだろう。ずっと一緒にいてあげると約束した彼女。それを受け入れた「ぼく」。取り引きされたものは、「ぼく」の魂と彼女のもっていた「えいえん」。

「ここにあるよ、えいえんは、ここにあるよ。」

 それが、本当に「ぼく」の求めていた「えいえん」そのものなのかどうか、今となっては確かめる術はないのだが、せめて「ひと」ならざる誰かがずっと側にいてくれることが、今の「ぼく」の救いとはなるだろう。他の誰かを本当は求めていたのかもしれないけど、少なくとも彼女は、その人と同じ「姿」をしていて、その人の「声」でしゃべって、その人の「口癖」をまねて、そういうふうにしてずっとずっとその人の「ふり」をしていてくれるなら、きっとそれが「ぼく」にとっての救いになるだろう。彼女は…「ぼく」の一番大切だった人に「擬態」して、ずっと待っていた。「ぼく」と遊べる日が来るのを待っていた。その時「ぼく」の求めていた世界を約束して、「えいえん」のくちづけをかわしたんだ。「ぼく」は、もう、彼女の一部になってしまったんだ。だから、このままどこまでもずっといけばいいさ……

 

【えいえん そのよん 『雲』】

 〜かぜをかんじたかったら、くもといっしょにそらをとぼう。せかいのはてまでとんでゆこう〜

 

<ねぇ、たとえば草むらの上に転がって、風を感じるなんてことは、もうできないのかな>

<ううん、そんなことはないと思うよ>

<そうしてみたいんだ。大きな雲を真下から眺めてさ>

<だったらすればいいんだよ。これはあなたの旅なんだから、好きなことをすればいいんだよ>

<でも、どうしたらいいんだろう。ぼくはいつも見える世界の外側だ>

<まだ、難しいのかな。あたしは感じられるよ。草の匂いを帯びた風が>

<やり方を教えてくれよ>

<うーん……じゃあ、手伝うよ> 彼女が僕の背中に回って、そして両腕で僕の体を抱く。

<いい?> <あ、うん…>

<雲が見えるよね…> すぐ耳の後ろで声。

<見えるよ> <ゆっくりと動いてるよね> <そうだね。動いている>

<あれは、何に押されて動いてるのかな> <風> <そう、風だね…>

<風は、雲を運んで…ずっと遠くまで運んでゆくんだよ…> <…世界の果てまでね> <………>

 

 「えいえん」。その世界は閉塞的だと言ったが、ある意味ではそれほど悲観したものでもないかもしれない。そこではイメージするものが全て現実となり、リアルに感じ取れる世界だ。ただちょっとだけ、心をそれにふりむける術があって、うまくいくかどうかは案外慣れが必要なものだ。主人公はもう、ずっと前にこの世界に訪れながら、しかしなぜかまだそれほどここに慣れてはいない。まだ、手助けが必要な存在であるようだ。

 一方、彼女はとても慣れていた。まるで「えいえん」にこの世界に住んで居るかのように(それは本当に変な言い回しだけれども)、自由にこの世界を飛翔し、魂で感じることができるようだった。結局迷いの差なのかもしれないが、とにかく彼女が側にいてくれる限り、安心なのは確かだった。

 「ぼく」の体は今、どうなっているのだろう。草むらの上に寝転がって風を感じることというのは、肉体を持っていて初めて可能だ。それがもう叶わないと思いこんでしまうのは、肉体を喪失してしまったためか? …いや、ちがう。彼女は「ぼく」の背中に回って、両腕で体を抱きしめてくれたのだから、「ぼく」にも彼女にも体は存在する。ただそれが、肉体というよりはお互いがお互いをイメージするその過程で意識の「媒介」のようなものであろうが、ともかくもそれと認知できる体は存在している。ならば、欠けているのは転がることのできる草むらや、そこにそよぐ風のことか。そういう環境のことを差しているのか。

 確かに今まで、夕日に暮れる街を眺めながら、主人公は途方に暮れていた。止まっている場所から動いている場所を眺めていても何も起こらずずっと同じことの繰り返して、世界は「ぼく」の外側にあった。「ぼく」がそれにふれたり感じたり何か影響を与えることは出来ないと思っていた。けれども、そういった感覚もひょっとしたら「ぼく」自身がここに来てしまったことを嘆き、切り離された世界にいることを思い、そこに境界を隔ててしまっているからであるにすぎないのだとしたら…それはただ単にまだ慣れていないせいということになるのか。とすれば「えいえん」の世界の限界性ということではなかったのか。

 試しに、彼女と空を見上げてみよう。そこに雲が見える。そいつはゆっくりとたなびきながら姿を刻々と変動させて空を流れてゆく。雲を動かしているのは、目には見えないかもしれないけど間違いなく、風。「ぼく」はそれをイメージすることが出来る。感じることが出来る…そこが大切なところかもしれない。想像してみよう。風は雲を運ぶ。ずっとずっと遠くの街まで運んでゆく。風によって雲はずっと旅をしている。「えいえん」の旅だと。それをイメージしてみようとする。世界の果てまで風は雲を運ぶとして、その果てをイメージしきれるかどうか? えいえんに果てはあるのか? もしも世界が閉じていればそういうものがあると言えるかもしれないが、「えいえん」の内部では果てはない。果てしないもの、それが「えいえん」であり、現実ではないものだったりするのだから。 草の匂いが、鼻の奥を刺した。 それは風に運ばれてきた匂いだ。

 

<きたよ…風…> <そう、よかった>

<でも、もう少し手伝っていてほしいな> <うん、わかったよ>

もう少し、抱かれていたかった。 世界の果てまで届くという風を感じながら。

 

 やがて、風を連想した主人公の鼻孔に草のにおいが香る。それはかなり強烈な芳香であったに相違なく、「差す」という表現に如実に現れている。子供のころ草むらに寝ころんだ人ならわかるあの全身を包み込むような草の香をどう表現してよいものかわからないが、たぶんあれと同じものを感じることが出来たのだ。考えてみれば、心の内にある全てのものがそこでは現実になるのだから、草の匂いだって、小さいときの記憶の通りに再現されているはずなのだ。イメージするもの、それは全て、「現実」でありリアルな「夢」なのだ。そういう「ソラリスの夢」の中にいることを示唆する、顕密なエピソードだ。なんだか彼がうらやましいくらい。

 風を感じられたこと。草のにおいを嗅いだこと。それは真新しい体験だったが、それよりもなによりも、彼が欲していたのは誰かに抱きしめられることであったように思う。感傷の次に望まれるのは愛情。そして暖かい人のぬくもり。そこに甘えながら、「えいえん」を実感する。ほとんど夢心地の光景だ。なんとも詩的気分にあふれていて、想像するだに楽しい。結局彼は、それはそれで安らぎを感じているのではなかろうか。やはりここが彼の求めた世界なのか。少なくとも彼女の腕に抱かれ、じっとうつりゆく風景のただ中にたゆたっているうちは、主人公の内に悲しみはない。その世界を悲観する要素もない。また、彼女も、そうしていつまでも彼の背中を抱きしめていることをいとう様子もない。お互いに満ち足りた風景がゆったりと流れてゆくのだ。それはとても気持ちのいいことだ。世界の果てまで届くという風を、信じられるようないい心地のはずだ。でも、「果て」が…、ある? それはどういうことなのだろうか。世界はそこで切り取られてしまっているのか。「えいえん」は、やはりまやかしなのか。逆に、ありもしない「果て」をリアルに「果て」だと感じてしまう「ぼく」が、此の世界に疑いをかけている証拠なのかもしれない。彼女はきっと、そういうつもりで「世界の果てまで」と表現したのではなかったはずだ。きっとどこまでもどこまでも風が吹き、雲がたなびいていく様子をイメージしてなげかけた言葉だったろう。一緒に居ながら、その腕に抱き留められながら、なぜかそこで「ぼく」と彼女との意識のずれが生じてしまっていることを素直に認めなければならない。

 

【えいえん そのご 『雲海』】

  〜うみにたゆたうひつじ。それは、えいえんからこぼれおちてゆめをみる、あわれなぼく〜

 

<空だけの世界…>

<この下には、何があるんだろうね>

<なんにもないよ>

<そうかな。あたしは、広大に広がる野に、放し飼いの羊がたくさんいると思うよ>

<いや、ずっと空だけが続いてるんだと思う>

<どうして…? 羊を放し飼いにしておこうよ>

<大地がないから、羊はみんな落下してゆくよ>

<だったら、大地を作ろうよ。新緑の芽生えたばかりの大地>

<いらないよ。海でいい>

<羊は、みんな海に落下してゆくの…?>

<そう。ぼちゃぼちゃと海に落ちる。一面水平線の海。そこでぷかぷかと浮かんで余生を送るんだ>

<でもその羊たちは、みんなあなたなんだよねぇ?>

<そう。僕だよ。無力な羊はぜんぶ僕だ…> <…というよりも、今の僕が、海に浮かぶ羊なんだと思う>

海に浮かぶ羊。それは唐突にしっくりくる、たとえだという気がした。

 

 『ONE』を最初にプレイした時、多くの人たちがきっとそうであるように、自分もこれが普通のリアルタイプな学園恋愛インタラクティブノベルだと思っていた。まさかファンタジーともSFとも思っていないから、そこに描き出されている女の子達や友人や学校の風景というものに何の疑問も持ってはいなかった。最も比較されるゲームは『ToHeart』だと思うが、それとかわりない舞台設定だと信じて疑わなかったのが正直なところだ。従って、作中、のっけから始まるわけのわからないモノローグなんてものは当然目に見えて頭に記録される前にオートで削除されていたし、時折入る得体の知れない風景と感傷的なポエム(つまりここで引用している一連のモノローグ部分)についても、ああ、青少年期特有の感傷に浸りたい気分のあらわれかねー…的受け止め方でさらりと流してきていた。しかし、さすがにこのセンテンスに至って、いいかげん異世界の表現がくどいというのと場当たり的な台詞の難解さについていくことができなくなり、まじめに読解を試みるようになっていた。その時、ようやく言葉の一つ一つが脳を通過するようになり、言葉の暗喩を捉える気分になったわけである。…いや、暗喩ではなくて、それらが本当の主人公の視界の風景であるという可能性を考慮し始めていた。この異世界はひょっとして、このゲームの核心なのか? とすると、これまで見てきた学園コメディは一体、何? …はじめてそういう思考の仕方を試みたとき正直戦慄した。ひょっとして今まで、だまされてきた??  このとき想像したのはこういうことだ。「羊」というのは紛れもなく「夢」のメタファーだろう。従って主人公は夢を見ている。「海に浮かぶ羊」という表現がそれほどしっくりくるということは、彼は「海」なるものの中でずっと夢を見ている存在。本当の彼は、「海」という無限な広がりの中にぷかぷかと浮かんで、ただ際限なく彷徨っている夢のかたまりのようなものかもしれないと。そうして見る夢が、瑞佳との登校であり、七世とのバトルであり、茜との逢い引きであったのだとしたら…。そういう唯心的還元を試みたとき、かなり背筋がぞくっときたのだ。そんなからくりが背後に展開している可能性というのは、ほとんど想定していなかったからだ。なるほど、これまで『ONE』をプレイした人達の評価がいつも多くの戸惑いの中にあったというのは、そういう理由であったのか。だが、それならば主人公の存在するこの不可思議な「海」とは、一体何であろうか? 彼は現実にはどうなってしまっているのだろうか? 「海」というのは、内的意識のたゆたう、自閉的空間なのか? 他に解釈は?? −しかしいずれにせよ、全ての物語が仮想(バーチャル)なのだとしたら、これは大変なことなのには違いない。「ぼく」は自分のおかれている状況もよくのみこめないまま、繰り返し繰り返し学校へ通って仲間と戯れる「オレ」の夢を見続けている。その「オレ」自身の夢をプレイヤーがまた追っかけながら、体験する恋愛アドベンチャーが『ONE』なんだとしたら、それはまさに過去に類を見ないサイコドラマ。前代未聞の設定だ。ほとんどルール違反なんじゃないかとさえ思えたのだ。(もっともルール違反な設定は『TACTICS』ゲームの18番だが)。しかし、ここではそれを断定する術はないし、圧倒的にシナリオのボリュームサイズが、「正気」なオレの物語に偏っているのだから、ひょっとしたら自分の思い違いかもしれない。ここは一つ先を読み進めながら判断しようじゃないか…というのが、最初の自制心。そして無限の深みに捉えられてゆくきっかけだった気がする。

 

<でも、夢の中ではみんな、空を飛ぶんだよ>

<羊が空を飛ぶのかい>

<飛んでもいいと思うけどな>

<それはたぶん滑稽だよ。似合わない…> <…羊たちは、自分の立場をわきまえた上で、海を選ぶんだ>

<それも自分の比喩…?>

<………>

<…少し言い過ぎたかな>

<ううん、気にしてないけど…>

 

 羊のメタファーが現れたあたりから、「ボク」と言っていたのが「僕」になっている。漢字化するというのは、「成長」のプログレスを暗示しているように思える。

 つまりは「僕」は、自分の立場をわきまえてこの世界を選んだのだと。 こうした言い方は、この世界を蔑んでいることにもなる。 彼女を含むこの世界を。あるいはさりげない、アイロニー。 …気づいているだろうか? この「僕」の猜疑心に。

 女の子はあくまで冷静で、空だけの存在じゃ寂しいから、その下に広大な野原と羊の群を想像しようと提案している。想像ということは、たぶん、それは「創造」の作業だと思えるけど、ともかく空だけではなくて、生き物の視点で世界を置こうと話しているのだ。しかし、主人公はどうしてそうひねくれたものだか、羊たちに大地を与えることを拒否し、そこは空だけの空間なんだとあくまで言いはる。イマジネーションの方向性が今までの彼自身が放ってきたアイロニーな言葉と一致するものだ。なんにもない空虚。空だけがどこまでも広がっている無規定な空間。あるのは「僕」のたましいだけ。羊は夢を見ている。「僕」も夢をみている。大地で草をはむことなどしない。ただそこに存在している。生き物としての営為を拒絶するかのように。

 だが、物理的に羊は空に浮かんでいることはきっとできないだろうから、想像の中でも落っこちてゆく。彼らに大地を与えたくない「僕」は、羊が落っこちてゆく海を想像し始める。羊たちは解き放たれた空から引力に逆らえずに落っこちてきて、ぼちゃぼちゃと海に沈む。この光景、想像すると楽しかったり笑えたりもするはずなのだが、主人公があまりに真剣に訴えるのでかえっておそろしげな光景にも思えてくる。シュールすぎるのだ。羊も海も、このミスマッチさがなんともいえない。大丈夫なのか思われる表現だが、きっと彼自身の内部ではそれが一番当たり前な光景だろうし、それなりの必然性もある。海に浮かぶ羊が自分だというまぎれもない実感を語っているから、こんな話しになるのである。だから実際は笑い事ではない。彼の言葉を借りれば、羊たちはぷかぷかと「海」に浮かんだまま、余生を送るというのだから…言わんとするところは、死ぬまでもう、空へは戻れないということ。はたまた緑の大地で草をはむことも永遠にかなわない。ただ海の上。そこに浮かんでいるだけの無力な存在だ。

 「無力な羊はみんな僕。」−それを言ってしまう主人公の厭世的な気分をどう表現していいものか。羊にはどうして周りがこうなっているのかということも、どうしたらいいのかということもなんにもわかりゃしない。自分の意思で空にとどまっていることすらできない哀れな羊は、海水にまみれながらただ、ぷかぷかと波間に浮かんでいることしかできない。絶対的に無力なのだ。なにも抵抗する術がないのだ。「夢」を見るだけの存在が、360度水平線の海にただ投げ出されている光景というのは、せんじつめれば、いまの主人公が「えいえん」の世界で何もすることができない(と思いこんでいる)のに似ている。まさに自身の置かれた状況の直接的比喩であるというのは間違いないだろう。そうした彼の心をどうにかしてやりたい女の子の気持ちも言葉のうちに伝わってくるのだが、いまや「僕」は何を言われても、「羊」としてなにもせずに生きていることしかできない弱さを露呈したままだ。その気になってみれば「羊」は空を飛ぶことだってあるかもしれないという空想を否定し、ただ自虐的思考に固まっているのだ。

 羊は夢を見ている。永遠のドリーマー。「海」に浮かぶ羊は、空を飛ぶ夢を見られないのか? 彼の答えは否だ。提案は即座に否決されてしまった。無力な羊がそんなだいそれた夢を見られるはずがないと、一言で打ち消してしまった。かくして羊は、夢の中でもやっぱり「海」に浮かんでいる自分の姿を承認し確定させてしまった。羽が生えて空を飛ぶ夢を見る羊はそんなに滑稽だろうか? そんなに似合わないだろうか? 羊は自分の立場をわきまえて「海」を選ぶのだというならば、「僕」は「僕」自身を羊に仮託した時点でもう、自分の存在を卑下していることになる。心が、しびれている。打ちのめされているから、その夢もまた、矮小なものになってゆく。海に浮かぶ羊のビジョンも、ただ彼の弱さの故に、纏おうとするジェスチャーなのだ。 「つまり”僕”は自分の立場をわきまえてこの世界を選んだ。」−彼女はそれを肯定した。でも、そうなんだ。「僕」は「僕」の一番似合いそうな場所を選んだ結果、ここに到達し、そこで無力な自分を改めてかみしめ、そして彼女とともにいる。とすれば、この空間は本当の「えいえん」ではないのかもしれない…。閉じられた「僕」だけの「えいえん」。「僕」と彼女だけしか存在しない、なにもない空っぽの「えいえん」。そして彼女の持ってきた「えいえん」。

 何か諦めのような気分でそれを眺めたとき、そもそもそういう気持ちをぶつけるということはきっと、彼女自身への蔑み(そして自分へのものと)が介在することになる。「僕」は間接的に彼女のことも無力な存在だと決めつけている。 即ち疑っているのだ。だから、「猜疑心」なのだ。彼女の存在と、それが導いたこの終局の形、「えいえん」の夢見る羊、それらを全て含む「えいえんの世界」。その世界全体を徐々に疑ってきている。どうしようもなく厭世的な表現になるのはそういうことだ。どこか、それが期待と違うものであることに感づいているのだ。そういう「僕」の精神状態に、当の彼女は気づいているのだろうか? あるいは気づいていたとしても、どうすることもできないのだろうか? 本当のところ、「えいえん」という形に自身を閉じこめてしまっているのは彼の心であって、彼女はそれを「形」にして見せたにすぎない。「形」にしたということは、ただ単にここにこういう世界があるんだよと、誘っただけなのだろう。「えいえん」の魔法の小部屋。彼が望んでいたお菓子の国で、一緒に遊ぶために…それだけのこと。だとすれば、猜疑心を向けるべきはむしろ彼自身の心の側なのであって、「えいえん」の突破口もつまるところ自分の心の「絆」の求め方に向けられるべきではなかろうか? おもちゃにすがって、食べればなくなってしまうキャラメルを全部捨てて、ずっとおもちゃの車輪の中で生きているこの閉塞した事態を招いたのも、結局は幼い時分の大いなるあやまちがゆえであったにちがいない。キャラメルのおまけにすがった、ぼくの、ぼくだけの罪だ。

 

<でも羊たちは、とても泳ぎがうまいんだ>

<ほんとに…?>

<じゃぶじゃぶと波を掻き分けてゆくよ。たぶんね>

<だったらいいよね。空が飛べなくても> でもたどり着ける島なんて、ないんだ。 ないんだよ

 

 羊の話に戻る。「僕」はどうやら、自分がこの世界に対していささか卑下した感情を抱いていることを、彼女に知られたくなくなったようだ。ここを否定するということは彼女を否定するということになってしまうのだから、そういう事態は出来れば避けたい。まして、何かを疑いはじめていることを悟られてはならない。「盟約」がある限り、「僕」には彼女を拒絶することなんてできない。羊たちがじゃぶじゃぶと波をかき分けてゆくイメージは、「僕」なりのささやかな歩みよりともとれる。泳ぎがうまいなんてことは想像してなかったから、彼女も少し驚く。羊が泳げるかどうかというとたぶん泳げると思うんだが、それにしてもたくさんの海に浮かぶ羊たちがそろってどこかへ泳いでいく様子を想像するのはなかなかどうして、変な情景だ。でも、彼がそう言うんだからここでは、きっとそれでよいのだろう。羊たちは泳げることに決まった。海に浮かんでいたって溺れたりはしないんだ。きっと上手に泳ぐよ、きっと……。

 表面的に彼女を安心させる心の背後では、でもやっぱり主人公は猜疑心を否めない。じゃぶじゃぶ波をかきわけたって、たどり着ける島は現れたりしないんだ。羊たちは陸に上がることなんて永遠にできない。どこまで泳いでもそこは青い海原が水平線まで続き、はてしない波間をただ目的地もなく泳いでゆくことしか出来ない彼ら。どんなに上手に泳げたって無力には変わりないんだ。だってそこには海しかないんだから…。ないんだよ。ぼくの精神のたどり着ける先なんて。そういう旅路なんだ。

 この虚しさ、無力さに、気づいてくれるだろうか? それは絶望ではなくて、ただひたすらあふれかえる虚無の大海なのだ。虚無の絶対的なあらわれとして、羊の浮かぶ「海」はどこまでもどこまでも際限なく広く、遠い水平線の彼方まで何もない光景が続いている。その圧倒的な空虚さに放心しているのだ。口に出しては言わないけれど、彼女との会話の後にはいつも、この、「えいえん」の虚無が訪れる。深く深く、心の淵に落ち込んでゆく。それは本当にしあわせなことなのだろうか? ここは「僕」の住むべき世界なのだろうか? 疑念が、よぎる。盟約に対するそれは、「僕」なりの静かなる背信。

 

【えいえん そのろく 『雲海の上』】

 〜かんぜんときょむのなかでは、ひとはなかない〜

 

 たとえば泣きたいときがある。

どこへ向かって泣けばいいのだろう。 なにを思って泣けばいいのだろう。

虚無からは幸せは生まれない。 そんな気がしていた。

放り出された海に浮かび、「僕」はなにを泣き叫ぶのだろう。

そんなことをする気にすらならない。はたしてこういう状態が幸せなのだろうか…。

空虚は、ぽっかりと胸に空いた穴。 もう失うこともないもの。

それが完全な形なのだろうか。

なにも失わない世界にいる「僕」は なにをこんなにも恐れているのだろう。

選択肢のない袋小路だった。つまりそれは、終わりだ。

それを自分でも気づかないうちに心のどこかで悟っていたから、こんなにも空虚だったんだ。

 

 「僕」がここへ来て抱いた疑念が、そこには凝縮されている。それは単純に世界の閉塞性に対する不満というのじゃない。世界は閉塞しているどころか、際限もわからぬほどに広大で、どこまで進んでも果てしない。どこまで行っても本当に自由な海原だ。そしてイメージする全てのビジョンが現実となり、たとえば草の匂いだってかぐことが出来るし、雲を吹き流す風を素肌に感じることもできる。なんでも可能な世界だ。ちょっとしたこつをつかめば、どんなことだってどんな光景にだて出会える筈。そしてそれを手伝ってくれる傍らの彼女もいる。「えいえんの盟約」で結ばれた「絆」は、二人の距離を隔てることなんて決してないだろう。「僕」は自由の海原に立って、世界を全て自分の両手に抱え込んでいるも同然なのだ。この世界をまるごと支配している筈なのだ。しかしながら…

 「僕」がそこに見る光景はなぜなのかとても悲しい。悲しい光景しか訪れない。そして、そういう魂の底に眠っているはずの寂寞たる風景に、いつもなぜかこの上もなく魅入られてしまう。そういう場所ばかり見て回っている気がする。たぶん、そうした一連の「僕」が旅する風景は、「僕」自身の心の淵にある精神世界の反映なのだ。一人でいようとする寂しい心が、そういったものを見せようとする。もしも閉塞を感じるならば、しめつけられるようなくるおしい窮屈さは、「僕」自身の内にある閉鎖性そのものだとも言える。「僕」の魂が元来それを求めている。従って「えいえん」は、それを速やかに読みとって「世界」を生み出す。ここにあるものは「僕」の心の中の風景の実在化の結果であるはずなのだ。だからきっと、際限なく「僕」の心はこういった風景で埋められている。何かとんでもない抑圧が、それらを生み出している。「僕」は何を自分に命じたのか? どのような感情を心の暗闇に押し込めたというのか?

 たとえば泣くこと。 それは遠い過去の光景のように思える。泣いていた「僕」は、確かに向こう側の世界の「僕」のようだ。けれどもここにきてそうした感情も忘れてしまった。忘れたということは、封印してきたのだろう。閉じこめざるを得なかった。過去の思い出の全てと一緒に、いっさいがっさいの悲しい記憶とともに、「僕」の見えない心の壁の奥へと塗り込め、もとからなきものとしてきた。そうしなければきっと、自分すらが存在していられなかったのだ。だからつまり、悲しいことの苦痛から逃げて、悲しいことのない、とても幸せなえいえんの国へやってきたはずなのに、それなのになぜ、ぼくはここへきてもまた泣こうとしているのだろうか。「泣きたいときがある」なんて、言うのだろうか。

 たとえ無理に泣くことをやめても、泣きたいという本性は消え去ることはない。この世に涙があることを忘却してしまえるはずがなかった。泣きたくなるような事象を全て忘れることで涙は止まったかもしれないが、泣こうとしている魂の本来の「悲しみ」はけしてとどめることは出来ない。結局、中途半端な位置で魂はぶら下がったままなのだ。世界の境界の狭間で、どっちへもいけずに「僕」は彷徨っている。境界? しかし、こちら側とあちら側、後戻りできない線はもう、とっくに越えてきてしまっているというのに、なぜ今更、泣くことをわざわざ思わねばならないのだろう。泣くべきものがなにもないのに、それでもなお、泣く記憶から離れられないこの心の矛盾。…きっとそんなぼくは幸せではないだろう。けして「えいえん」の素晴らしさを享受しているとは言えないだろう。一体「僕」は、何を泣いていたのだろう? 何がそんなに悲しかったのだろう? 遠い過去に。

 最も大切な記憶がここでは奪われている。それがあまりにも辛い出来事だったから、自分で自分に忘れることを命じたのだ。だが、泣こうとする意思までは消えなかった。従って、主人公の意識の底にはとらえどころのない虚無という形で矛盾が沈殿してしまったのだろう。記憶喪失者の焦燥感にたぶん似ていて、そいつは際限なく彼自身を混乱せしめ、あるいは周りの世界への疑念を呼び起こす。泣きたいので泣こうとしても、ここでは何を泣いていいのかわからないし、どこに向かって泣いていいのかもわからない。泣く場所はここにはどこにもない。悲しみの具体的対象が存在しなくては、人はただ泣くこともできないのだ。そうした感情性喪失の心性の中で、虚無に包まれながらこれが本当に幸せなのだろうか? と「僕」は自問している。しあわせを願ったはずなのに、与えられたのは虚無の深淵だった。それが、「僕」の傍らの人への猜疑心の理由なのだ。

 

【えいえん そのなな 『沈む日』】

 〜ゆうやけのなかで、ぼくはおわったせかいをみつめる〜

 

帰り道…

<ん…?>

帰り道を見ている気がするよ。

<そう…?>

うん。遠く出かけたんだ、その日は。

<うん>

日も暮れて、空を見上げると、それは違う空なんだ。いつもとは。 違う方向に進む人生に続いてるんだ、その空は。 その日、遠出してしまったために、帰りたい場所には帰れなくなってしまう。 ぼくは海を越えて、知らない街で暮らすことになるんだ。 そしていつしか大きくなって、思う。 幼い日々を送った、自分の生まれた街があったことを。 それはとても悲しいことなんだ。

ほんとうの温もりはそこにあるはずだったんだからね。

<………> <…それは、今のあなたのことなのかな>

そんなふうに聞こえた…?

<うん…>

 

 「えいえん」の空虚さの中でこれまでの主人公は、ひたすら自分の存在をはかなんでいたように思える。そして自分を取り巻くこの世界と、そこにいる少女について、なんらかの疑念を抱きつつある彼の心情的変化がくみ取れる。心の空虚さはすなわち、過去にあったとてつもなく悲しい出来事を全て封印し、泣くことから逃げてしまった「僕」の背負うべき十字架だとも言えるが、空虚そのものしかない「えいえん」の世界の空洞性に慣れ親しむことのできない反動が、徐々に、無意識の中へ沈めた筈の「過去」を蘇らせつつある。沈んでゆく夕日のイメージが、おだやかに彼の改悛を呼び覚ます。あの日、なにがあったかということを、少しずつ取り戻し始めているのだ。当然、傍らの女の子にとってはそれは好ましくない事態なのだが、今はまだ、主人公の言葉の迷宮につきあいながら、じっと話を聞いているようだ。

 「帰り道」、ということは、まぎれもなく彼自身がその夕日の向こうから来たということだ。あの、遠景の彼方に、かつて慣れ親しんだ世界が存在することを示唆する言葉だ。「夕日」と「帰り道」という語彙の連想性は、その茜色の光の中に家族の待つ暖かい家庭があるような印象を投げかける。子供のころ、あの空の色を見てお家への郷愁に駆られ、まだ遊びたい気持ちもいつの間にかどこかへとんでいって、急いで家路についた。…そうした感覚が残っているならば、それは大概の人々に、彼が旅立つ前の世界を、すなわち帰るべき家庭を連想させるはずだ。それはとても自然なことであるに違いない。

 その日は遠くまで出かけた。あんまりにも遠くまで来てしまったために、いつの間にか日が暮れて夕闇が訪れようとしている段になって、帰り道がわからず、家路につけなくなってしまった。「ぼく」は迷子になってしまったのだ。空を見上げるとそれは、いつもの見知った街角の見知った空の風景ではない。「ぼく」はまったく知らない土地に来てしまい、家に帰る道筋も見いだせない。そして途方に暮れる。あの日の光の元へ帰りたい。けれども空には既に太陽の痕跡はなく、まるで知らない世界の色が広がっている。「ぼ」くはもう家に帰れないのだ。帰れないところに来てしまった。ふとしたきっかけで遠出をしたことが、「ぼく」の帰る家を奪ってしまった。

 家に帰れなくなった「ぼく」は、「海」という隔たりを超えて、全然異なる街で暮らすようになる。「海」を超えてしまうということは、いよいよもって引き返せない場所まで来てしまったということだ。辛い日常から乖離しようとしていた「ぼく」の魂が、その日、ふとしたことでもう元に戻れなくなってしまい、そのまま「えいえん」の招請に出会って「海」という境界を超え、異なる世界へと連れられてきてしまったということを示唆する。そうしていつしか少年は大きくなり、幼かったころの自分を回想するにつれ、かつての世界のことを思い出し、本当の自分の生まれた街のことに思いを馳せ始める。つまり、「えいえん」の空虚の中から、遠い昔に自分の生きていた世界のことを記憶反芻し始めている。その街のことを思いだそうとしている。そうすればするほど、思いは改悛に満ち、悲しさがあふれてくる。本当の幸いや、本当の人のぬくもり、本当の家族の暖かさというものは、「僕」が捨ててきたあちらがわの世界にこそ実際あったはずなのだから…。そいつはしかし、大きくなった今だからこそ言えることで、今になってはじめて、捨ててきてしまった世界の重さというものをかみしめずにはいられなかった。

 ・・・・・・・・さすがに、これほどあからさまにこの世界のことを卑下し、あちら側への思いをぶつけられると、傍らの少女の方も言葉がない。「それは今のあなたのことなのかな?」と、たずねるまでもなかったかもしれない。「僕」の体験としてあからさまに語って見せた寓話だからだ。少女は言葉を失っている。二人の間に気まずい雰囲気が流れている。「そんなふうに聞こえた……?」と、はぐらかして答える主人公。それでも、「うん」と答えられたらその先は、もはや開き直りしかないだろう。「僕」は更に、言葉を続けてゆく。たとえそれが彼女にとって望ましくない言葉であっても、せきをきったように過去を振り返る「僕」の気持ちは、もはやおしとどめようもない。

 

ぼくはね、最後まで頑張ったんだ。

<………>

あのとき、頑張って、自分の街に居続けることを願った。

それは別にこの世界を否定しようとしたんじゃない。

この世界の存在を受け止めたうえで、あの場所に居残れるんじゃないかと、思っていたんだ。

でもダメだった。

<そんなことわざわざ言って欲しくないよ…>

ただね、もっとあのとき頑張っていれば、ほんとうに自分をあの場所に繋ぎ止められたのか、それが知りたかったんだ。

<どうして?>

べつに、可能性があったとして、それはここに来ないで済んでいたのか、という話しじゃない。

ただ、もしほんとうにできるんだったら、ぼくの人との絆っていうものがそれだけのものだったのかと、悔しいだけなんだ。

どう思う?

<たぶん…無理だったと思うよ>

<この世界はあなたの中で始まっていたんだから>

やっぱりそうか…。

<うん…>

でも、それが無理でも、この世界を終わらせることはできたかもしれない。

<………>

いや、できる、かもしれない。

<この世界は終わらないよ> <だって、すでに終わっているんだから>

 

  以下、「ぼく」が頑張って自分の街に居続けようとした話のことを、具体的にはどう解釈するのか? 多くの人たちがどうやら、学園生活に於ける主人公の世界、すなわち色々な少女たちとの恋愛を育んだ瑞佳のいる世界の話だと思いこんでいるようだが、そうではない。(むろん、もう一つの世界での記憶が目覚めつつある「ぼく」にとって、この語りかけ方はそういう意味合いも暗に含んでいる二重のアイロニーになっているのかもしれないが、ここでは「えいえん」の少女との会話の流れをまず優先して、主たる内容を考えたい)。丁寧に読んでいけば、それは先述「その日、遠出してしまったために、帰りたい場所には帰れなくなってしまった」「ぼく」の、「幼い日々を送った、自分の生まれた街」であることがわかるだろう。重要なのは、「ぼく」が妹と母親を失い天涯孤独の身になった時、おばさんの元へ引き取られたという事実で、そうするとここでの「あのとき、頑張って、自分の街に居続けることを願った」という語りもその、最愛の妹であるみさおと過ごした「街」にとどまり続けようとしたことを差していることになる。みさおを失ったとき、「ぼく」はとてもひどい状態だった。みさおの葬儀から帰ってきて、彼女が死の際まで手のひらから離さなかった「カメレオンのおもちゃ」を見据えたとき、堰を切ったように「ぼく」の目からはとめどもなく涙があふれ、どうにもならなくなっていた。こんな悲しいことが待っているなんて、ぼくはそれまで全く知らなかったのだ。悲しみに向かって生きているのなら、此の場所にずっととどまって居たい。みさおと一緒の場所に、ずっとずっと居たい…そう願ったとき、「ぼく」のなかで「えいえん」の種子が生まれる。それは、「ぼく」にとって、みさおとの思い出の中でいつまでも一緒に楽しく生きていける理想の世界だ。そしてみさおとだけの、ふたりっきりの止まった時間の世界で、ずっとずっと泣いてばかりいた「ぼく」の中に、その「えいえんの世界」は成長していた。確実に、精神を蝕みつつあった。その時点で既に「境界」は目の前に迫っていた。

 それでも主人公はなんとか、その街に残っていようと、つまりは現実の世界に踏みとどまっていようと努力したのだ。現実の街にもみさおとのいろんな記憶が残っているし、何よりもその土地が「ぼく」をこの世界につなぎとめていてくれる唯一の楔だったことだろう。しかし、おばの「ゆきこさん」が「ぼく」の身柄を引き取り、そうして全く知らない街へと連れてこられてしまったとき、全ての記憶が遠い街での出来事となり、帰り道を完全に見失い、「ぼく」と「ぼく」の妹とのやるせない思い出はそのまま過去へと封印された。きっとその時点で主人公は、自分が何をそんなに悲しくて泣いているのかもわからず、自分がどこにいるのかもわからず、ただただ放心状態で人形のように毎日を泣き暮れているだけの存在だったのだろう。泣いている合間を見て生活していた、という表現はそういうことだ。「ぼく」はもう、みさおとの思い出という現実にすら帰ってこられない状態で、泣き続けていた。「境界」を超え出てしまったのだ。「ぼく」の自我は崩壊した…。

 本当は、自分の中に生まれつつあった「えいえん」を認めた上で、それでもあの場所に辛い気持ちをかみしめながら生きていきたいと願った主人公がいる。まだ小さかったけど、必死にそこへとどまろうと踏ん張ったんだ。でも、精一杯のがんばりは結局無為だった。ここに来たくはなかったんだと今更言うつもりはないにしても、だけどあのとき「ぼく」にもっと、人との「絆」というものがきちんと存在して、あの世界との接点をたくさん持っていたのだとしたら、(…それは具体的には、生きている父であるとか、ぼくのことを心配してくれる母であるとか、もっと一緒に遊びたい友達とか、総じて家族や友達というものを指しているだろう…)その世界に自分をつなぎ止める何ものかがあったとしたならば、ひょっとしたらあの場所にとどまることが出来ただろうか? と、それが今にして思えばとても残念でならないのだ。

 さぁ、それはどうなのだろうか?  「ぼく」は本当に恵まれない子供だった。最後の「絆」であった妹を失った時、「ぼく」にはなにもこの世界に自分をつなぎとめるものがなくなってしまっていた。唯一それが存在したとするならば、目の前に置かれた「カメレオンのおもちゃ」という物体だけが、妹との最後の「思い出」……。悲しすぎる結末だ。生きている者にとっては禁断ともいうべき魔性のおもちゃと、「盟約」を交わしてしまったとき、「魔法」は発動して「ぼく」の魂はこちらがわへと連れてこられた。今立っている「えいえん」の世界は、「盟約」の世界だ。それは辛い記憶に覆いをかぶせて、逃げてきてしまった罪深い「ぼく」が、「えいえん」の空虚を抱きしめながら生き続ける世界。今更、そのことを悔いても始まらない。たとえあの時もっと違った「絆」があったとしても、「ぼく」は「ぼく」自身の中に生まれた「えいえん」に、いつかは取り込まれていっただろう。たぶん彼女もそう思っているはずだ。「盟約」によって連れてきたのは彼女だとしても、これは彼自身の心の中の彼の望んだ世界なのだから、きっとどんな形の救いがあったとしても最後にはやはり、この場所へとたどり着かざるを得なかったのではないだろうか。幸いここには一緒に居てくれる彼女の存在がある。それをせめてもの幸福と思うことはできないものなのだろうか?

 だが、彼の魂はまだ懸命に抗っているようだ。運命から。もしここへ来ることがぼくにとって避けられない運命だったとしても、これからぼくの意思によってこの空虚な世界を何とかして終わらせてしまうことはできるんじゃないか、と。それこそ彼女にとっては「そんなこと言って欲しくないよ」という言葉なんだろうと思うが、しかしこの疑問に対しては、迷うことなく言い放つ断定的な一撃が待っていた。 「この世界は終わらないよ」

 「たぶん」とか、「……」というためらいは全くない。そいつは「確信」だろう。全ての事情を知る者にとって、それはおそらく愚問中の愚問なのである。終わらせる? 始まってないものをどうやって終わらせるの? だって、すでに終わってしまったから、あなたはここに居るのよ。

 「僕」は、「僕」にとっての現実や、生きていることや、自身の人生や、その他なにもかもが全て、とっくに終わってしまっていることをこの時にようやく、知る。記憶の覚醒とともに。

 

【えいえん そのはち 『みずか』】

 〜キャラメルのおまけなんてもういらなかった〜

 

 

また、ぼくはこんな場所にいる…。

悲しい場所だ…。

ちがう もうぼくは知ってるんだ。 だから悲しいんだ。

<悲しい…?>

今さら、キャラメルのおまけなんか、いらなかったんだ。

<たくさんあそべるのに?>

うん。 いらなかったんだ、そんなもの。

<どうして?>

おとなになるってことは、そういうことなんだよ。

<わからないよ>

わからないさ。 だってずっと子供のままだったんだから…

(キミは…)  (みずかは…) 

 

 さて、いよいよ大詰めだ。「ぼく」はいよいよ、このえいえんの世界において覚醒しようとしている。(なぜか、覚醒が進むと再び、彼は自分のことを「ぼく」と表現し始める。それは、一緒にいる少女が自分よりもずっと幼いままであることに気づき始めた故の配慮だろうか。)もう、かたわらの女の子にはそれをとどめる術がないようだ。それどころか認識の亀裂さえ入り始めている。彼女の理解し得ない、手の届かないところに主人公の精神は行こうとしていて、それはすなわちこの世界の拒絶を意味しているようだ。「ぼく」はもう、世界のからくりに気づいてしまい、彼女との「盟約」があったことを思いだし、そして、「ぼく」の精神が閉じこめられていることにも感づいてしまった。「ぼく」はもう、あの日のこどもではなかった。あの日、遠くの街に出かけて帰れなくなってしまった、無力な子供ではなくなっていた。盟約は、今や「ぼく」の側から一方的に破棄されようとしている…。

 はじめ、ぼくは夕日に染まる街の風景を遠くから眺めながら、それが遠い過去に自分の属していた空間であることをなんとなく思い、いつまでも繰り返すライトの循環やバイクの音をながめてすごしていた。その世界はずっと動いてはいたが、止まっている世界の「ぼく」の目から見ると、同じことを無限に繰り返す円還運動の世界に見えた。「ぼく」の立つ「えいえん」からは、その外部の空間は無限ループの中にある止まった世界としてしか認知できないことがわかっていた。メリーゴーラウンドのように、ぼくの見る世界は無限巡回しているのだ。メビウスの輪のような形をした「えいえん」。

 一つのところが飽きたらまた次の場所へと無限に旅をしてゆく。移り変わる風景、それは、「ぼく」の心の中にある夢であるとも言えた。それがぼくの心象の現れであると気づいたとき、例えば夜の海に浮かぶ一筋の光のようなとても寂しい視覚的空間ばかりをなんとなくずっと、旅していることにも疑問を抱いた。それはつまり、ぼくの心にぽっかりと開いた空虚さが、そういう光景を連想させているのだということ。そんな寂しい気分をかみしめる。

 彼女と羊の話をしたときも、羊はただ永遠に広がる大海原をあてどもなく泳ぎ続ける空しい存在だと決めつけた。ただ、その時、羊(つまり「ぼく」)が漠然と夢を見ていることを示唆する言葉を聞いた。夢の内容はわからないが、きっと羊は自分の身分相応の夢を見るのだろうと思った。気がついてみれば「ぼく」は「えいえん」の大海にたゆたい、目的のない空虚さにただただ心を浮かべる存在になっていた。

 虚無の深淵、それは脱落している意識のせいであるとわかったのはいつだろう。やがてそこに、封印された記憶が存在することに気づく。夕日を見ていたら、そこへ帰れなくなってしまったあの日の幼い「ぼく」の姿が見えた。そして、悲しみに蝕まれつつも人との絆に懸命にすがり頑張ったことをすら思い出したのだ。ある街で。もう少しだ…。もう少しで思い出すことが出来る。「ぼく」はなぜ、あんなに悲しかったのだろう。悲しみの淵で何を求め、何が生まれ、そして何をあの時失ったのか…。

 また、悲しい場所にいる。暗闇につつまれた悲しい場所。いや、悲しいのは風景ではない。「ぼく」の心が悲しみを思い出していたのだ。なぜなら、「ぼく」はついに忘れ去っていた重大なことを思い出したからだ。この世界に来た理由を、「ぼく」になにが降りかかったのかということを含めて、全てを、この「えいえん」の世界において思い出してしまった…それはすなわち、夢見る「ぼく」自身の、その終わらない夢からの「覚醒」にもつながる。こちらで記憶を覚醒させてしまうということは、(むしろ記憶を覚醒できるということは、)あちら側の自分が消えることにつながる。(かつて消えた「事実」につながる。)消えること、すなわちそれが「盟約」だったから…。

 つまりは、はじめから「”ぼく”の魂はこちら側にあって、ただ羊が夢を見るかりそめの時間に、あちら側で「オレ」が目覚めていたのだから・・・・・

 以下に連なるのは延々、主人公が「えいえん」の世界にやってくる前の、とても悲しいお話。最愛の妹、みさおとのふたりっきりの病室での風景と、そして悲しい「ちちおやさんかんび」ごっこに続く、やるせない死別の物語だ。それはかなり唐突なシナリオだったし、それまでの物語から全くリンクしていないような、別世界の話のように思える。しかし、そうではない。リンクしていないのは、これまでの「夢」の内容なのだ。それこそがフェイクなものだったからだ。今、ようやく覚醒した身にしてみれば、これから話そうとする事柄が本当の「ぼく」の世界であり、「ぼく」の体験であり、「ぼく」の今ある立場の説明ということになる。だから、全ての謎解きはこのエピソードに軸足を保って検討推移しなければならないだろう。なぜならここで、はじめて「ぼく」は「夢」でない世界のことを語ろうとしているからだ。みさおとの短い邂逅の時、それが主人公の世界の逃れがたい真実である。あとは、そこから「えいえん」の世界を経由して生まれた「夢」なのだ。全てが「夢」だったのだ。

 「キャラメルのおまけ」という表現に関する解釈は、多くの『ONE』ファンの間での結論を援用する。問題ない。キャラメルは食べたらなくなってしまうが、おまけは残る。子供のころは、食べたらなくなってしまうキャラメルよりもおまけの方に目が向く。誰だって、グ○コのキャラメルに入っているおまけを集めた記憶がいくらかあることだろう。もはやおまけを集めることが目的であって、キャラメルの存在は眼中に無かった。キャラメルの方がおまけと化していた。そういうのは小さな子供にとって、とても自然なことなのだ。子供のうちは誰しも、食べたら即なくなってしまうキャラメルのことにそれほど執着はしない。まして、いくつでもキャラメルが買ってもらえる子供は、食べるもの対してそれほど執着がない。食べたらなくなってしまうものはきっとつまらないものだ。それより、キャラメルを食べた後にずっと遊べるおもちゃのことが大切だった。ずっとずっと飽きるまで遊べることの方が、大きな価値があることに思えた。いつまでも形に残るキャラメルのおもちゃと食べたらなくなってしまうキャラメルとは、つまるところ、「えいえん」を求める気持ちと、生身の人との「絆」のようなうつろいゆくものとの対比に使われた「暗号」だ(暗喩とはかかない)。

 ここでも「ぼく」は、女の子との関係の悪化を嫌って、わざとわかりにくく話しているふしがある。彼女がわからないことを承知した上で、こんな話をしてみるのだ。だから、「今さら、キャラメルのおまけなんか、いらなかったんだ。」という下りは、相手にそれを伝えるという意味合いよりは、「ぼく」自身の自己告白に近い。「ぼく」はもうおとなだから、自分の台詞に込められた暗号的な意味をそれはよく理解できる。しかし、きっと彼女はこどもだから、その真意までもくみ取ることは出来ないだろう。…それは、ちょっと意地悪。悪戯な復讐なのだ。子供のころにここへ連れてこられてしまった主人公の、戯れな復讐に似ている。事実として、相手=「キャラメルのおまけ」に対して、面と向かって「今さら、キャラメルのおまけなんかいらなかったんだ。」と言ってのけるのだから、痛烈な皮肉だろう。むろん、自分が「キャラメルのおまけ」なんてことを知りもしない当人にとっては、このアイロニーを理解することなど不可能なのだろうが、わかってて言っている「ぼく」は意地悪だ。

 おとなになるってことは、キャラメルのおまけよりも本体のキャラメルの価値に気づくということだ。おとなは、商品の価値がキャラメルにあるべきことを知っている。食べてしまえばなくなるかもしれないが、味わっているときの味覚は舌の上に広がり、懐かしく記憶される。そうした、目に見えなくなっても残る「価値」というものに気づくのは、やはり思春期を過ぎたころからなのだろうか。あるいは「ぼく」にとってそれは、初めて異性を好きになった時だったのかもしれない…。ともあれ、おとなになるってことは、そういうことなんだと少女に無理矢理言い聞かせて、ここから長い長い回想シーンに突入である。キャラメルのおまけの話は一種の謎かけなのであって、答えが見えれば必ずここで必要な表現だったのだ。主人公は気づいてしまったのだ。自分が、「キャラメルのおまけ」の悪戯に引っかかってしまっていたことに、ね。

 すぎてゆくもの、うつろいゆくものこそ人にとって実は本当に大切なものだ。いつまでも変わらないものなんてこの世には何一つ存在しないのだし、何よりもこの自分自身が季節の移り変わりの中で確実に一歩ずつ年を取り、変わっていってしまうものだ。だから、人は求める。そうしたうつろいゆく人生の狭間で、それでも変わりなく切り結ぶことの出来るかもしれない、愛する人との「絆」というものを。それを信じることで、人はお互いの中に自分をつなぎ止め、かりそめの永遠を知るのである。それが、人の世界に許された「永遠の盟約」の本題である。主人公はしかし、幸せだった時が一瞬にして崩れ落ち、あまりにも簡単にそれが壊れるのを目の当たりにして、変化流転する人間の現実世界のことを幼い気持ちでおそれた。そこから逃げようとした。あまりにも悲しくて、その悲しみに押しつぶされて、のみこまれて、とりこまれて、意識が遠のいた末に、自分だけの「えいえん」を見いだす。ある、止まったビジョンを取り押さえ、その循環世界の中に意識内完結という永遠を見たのである。確かに、想念だけの世界において時間規定は意味を失うし、あるいはまたそこから失うものももはやない。「えいえん」はそこにある。

  悲しみに向かって生きているのなら、この場所に留まっていたい。 ずっと、みさおと一緒にいた場所にいたい。…とは、最後の彼の言葉だ。

 

・・・・ うあーーーーん、うあーーーんっ!」

「うー…ごめんな、みさお」

「うぐっ…うん、わかった…」

よしよし、と頭を撫でる。

「いい子だな、みさおは」

「うんっ」

ぼくは、そんな幸せだった時にずっといたい。 それだけだ…。

 

 

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